東村山のソウルフード 特製ちゃんぽんの店「すぱいす」

西武線の高架化工事に伴い、惜しまれつつ閉店したちゃんぽんの店「すぱいす」。
実は、昨年11月に別の場所で営業を再開していました!

今回は再開した新店舗のレポートと、なぜこのお店が半世紀近くも地元で愛され、ファンを増やし続けているのか、その秘密に迫ります!

あの名店が復活していた!

1976年の創業以来、48年もの長きにわたり、東村山のソウルフードとして地元の人々に親しまれてきた「すぱいす」。広い駐車場を備えた平屋の店舗に「ちゃんぽん」と「すぱいす」の“のぼり”。この店構えに見覚えのある方も多いのではないでしょうか。

ところが、2015年から始まった「西武線連続立体交差事業」の影響を受け、「すぱいす」は2021年10月末にとうとう閉店を余儀なくされてしまいました。

この事業は、現在3路線が乗り入れている東村山駅の線路を、周辺4.5㎞に渡って高架化するというもの。これにより、日頃から交通渋滞を引き起こしている5つの踏切の解消と、東西に分断されている駅周辺の一体化整備が期待されています。

特に「すぱいす」のあった場所のすぐ横の踏切は、その先にある「野口橋」交差点を有名な渋滞スポットにしています。

高架化工事は現在も進行中で、完成は2024年の予定です。

こちらが、もと「すぱいす」があった場所の現在の様子です。昔を知っている人はこの写真を見ると悲しい気持ちになるかもしれませんが、ご安心ください。約1年のブランクを経て「すぱいす」は営業を再開していたのです!

新店舗の場所は「東村山市役所」の裏手になります。東村山駅東口から府中街道を南に進み、市役所のある「インディペンデンス通り」を左折。「東村山消防署」の交差点を右折したところにある、ファミリーマートのすぐ右隣です。

ちなみに「インディペンデンス通り」は、東村山市とアメリカのインディペンデンス市との姉妹提携35周年を記念して命名されたものです。

営業を再開した新店舗

移転前の店舗に比べるとこじんまり感は否めませんが、街の洋食屋さんのような老舗感を漂わせ、「すぱいす」は確かにそこにありました。

そして、入口には「2022年11月再OPENしました」の張り紙が!

ガラスが反射して見づらいですが、この張り紙を見たときの感動を皆さまにお伝えするために、あえて載せてみました。これを見てホッとされた方も多いのでは?

この日の開店は11時でしたが、30分前から一人二人とお客さまが並びだし、開店するとあっという間に満席になりました。

お得すぎる最強のランチメニュー

メニューはというと、お店の看板にもなっている「特製ちゃんぽん」を筆頭に「ちゃんぽん」「ラーメン」「皿うどん」「手作り餃子」など。

特筆すべきは開店時から午後2時まで提供されるランチメニュー。通常は単品にプラス300円で追加できる、大きな手作り餃子2個と半ライス(おかわり自由)のセットが、なんとプラス80円で追加されるというコスパ最強のメニューです。

この信じがたい料金設定には、「ランチは毎日食べるものだから、どうしても1000円以内に納めたかった」という店主ご夫妻の優しさが込められています。
世間では軒並み値上げが報道されていますが、食材を減らせば見栄えが悪くなってしまうし、お客さまが喜んでくれるのならとの一心で、この料金で提供しているそうです。

こちらがランチメニュー
こちらが通常メニュー 

ということで、私は何を注文したのかというと「特製ちゃんぽん」です。
本当はみなさまにお見せするためにランチセットを頼みたかったのですが、とても食べきれないと思ったので単品にしました。

店内を見回すと、特製ちゃんぽん、特製ちゃんぽんのセット、女性はハーフちゃんぽん、特製ハーフちゃんぽんなどを召し上がっていました。
ハーフサイズは店主の奥様の発案で、再開に伴ってつくられた新メニューとのこと。女性目線の食べやすさが人気となり、注文する女性客が増えたそうです。

これぞソウルフード、待っていたのはこの味!

そして待つこと十数分。大きなどんぶりにたくさんの具材と“豚ロースから揚げ”がのった、ボリューム満点の「特製ちゃんぽん」がいい香りを放ちながら運ばれてきました!

では、まずはスープから。

丸鶏と野菜をじっくり煮込んで作った清湯と、鶏ガラベースの白湯の二種を合わせたスープ。そこに具材から溶け出したやさしい甘みが加わり、まろやかでコクのある深い味わいが口一杯に広がります。

麺は菅野製麺の特製中太麺。もちもちした麺にスープがよく絡み、お互いを引き立てつつ絶妙な一体感を醸しています。

具材は、キャベツ、人参、もやし、玉ねぎ、長ネギ、キクラゲ、かまぼこ、さつま揚げ、えび、たこ、豚肉と全部で11種類。味だけでなく、見た目にも楽しい豪華なビジュアルです。

そして、その上にドーンとのっているのが、食べやすくカットされた程よい厚みの“豚ロースから揚げ”

ゴマたっぷりの辛味ソースがアクセントになり、肉と野菜の甘みと相まってもう箸が止まらない。スープの染みた“豚ロースから揚げ”をライスに載せて食べると、これがまた絶品らしい。

カウンターには醤油、酢、コショウ、ラー油も用意されているので、味変も楽しめます。

ファンを唸らせる味の秘密とは?

今回は、この味の秘密を探るべく、厨房を覗かせていただきました。

厨房に入ってまず目に入ったのがこちらの麺。

そしてゆっくりと時間をかけて抽出した香味たっぷりの清湯。奥に見えているのが白湯。どちらも先代から引き継がれた秘伝の味。

この大きなお鍋に毎日70~80杯分のスープを作っています。お鍋が空になるとお店はおしまいなのだそう。再オープン初日はお鍋の一番上まで、約120杯分のスープを準備したそうですよ。

「すぱいす」のご主人。具材の説明をしてくださっています

手前で麺を茹でている間にスープと具材の準備をします。
厨房の広さを考えてメニューは移転前の半分ほどに絞り、人気のちゃんぽんと手作り餃子中心のラインナップになったそうです。

ちゃんぽんなのになぜ「すぱいす」?

ここで「すぱいす」の誕生から現在までの歴史を簡単にご紹介しましょう。

「すぱいす」は、現店主の伯父様に当たる初代・創業者の命名で、

①すぱいす(調味料)は料理になくてはならないもの
②常にお客様から必要とされるものでありたい

という二つの想いが込められているのだそうです。

「すぱいす」が誕生したのは実は埼玉県の狭山で、東村山店は2店舗目になります。初代はその後東北に帰ることになり、経営を引き継いだのが現店主のご両親でした。一時は小平にも店舗があったそうですが、現在は東村山の1店舗に落ち着いています。

右下の「すぱいす」のロゴは、現店主のご両親が作られたもの

「すぱいす」のご主人は、高校生の頃からお店を手伝いはじめ、他の仕事に就くことも考えたそうですが、晩年病気と闘いながら職人として厨房に立ち続けるお父様の姿を見て、店を継ぐことを決意したのだといいます。

顔は母似、性格は父似(ご本人談)だそうで、御尊父と一緒に厨房に立っていた頃はよく意見がぶつかっていたそうです。が、考え方は違っても店に対する想いは一緒。今後はお父様が一生懸命やっていたことをもっとアピールしていきたいとお話されていました。

閉店と再開までの道のり

高架線化工事で閉店を余儀なくされたときは、半年たっても移転場所が見つからず、一時はもう辞めようかと思ったこともあったそうです。
でも、今まで長く地元でやってきた実績があり、待っている常連さんがたくさんいるのだからやった方がいいと周りから励まされ、この場所を紹介してもらったのだそう。

駐車場もなく、以前と比べるとかなり狭くなるけれど、小さなスペースでも夫婦二人でできることをやろう、と再開を決めたのだそうです。「妻がやると言ってくれなかったらできなかった。」とご主人は当時を振り返ります。

そして店舗の改修工事に半年ほどを費やし、昨年11月のオープンにこぎ着けたのでした。
再開については特に宣伝したわけではなく、工事中の店に張り紙をしただけだったそうですが、通りすがりの人が工事の人に訪ねたり、張り紙を見たりと、人づてに噂が広まり、再オープン当日から行列ができたそうです。

再開から1ヶ月間は本当に忙しく、閉店後に店の掃除と次の日の仕込みをして、家に帰るのは次の日の朝5時。それから洗濯などをしてまた店へ戻る日々が続き、睡眠も十分にとれなかったそうです。

2階にはセルフのイートインスペースを併設

新店舗はご覧のとおり、カウンター7席となっています。

再オープン直前に2階も使えることになり、急遽セルフのイートインスペースが作られました。

外階段なので、会計後、お客様自身で注文したものを2階まで運んでもらうことに。

2階には8席あります。

半世紀近く地元で愛されてきたその訳は?

店舗の閉店・再開と大変な経験をしたご夫妻ですが、「悪いことばかりではなかった」と口を揃えます。

ひとつはお店が小さくなったことで、以前よりお客様とコミュニケーションがとりやすくなったこと。いろいろな話を聞く機会が増えて、お店の参考になることもしばしばなんだとか。

もうひとつは、まとまった休みがとれたこと。今まで長い休みがとれなかったので、移転先を探している間は温泉に行ったりしてリフレッシュできたそうです。

なので、当面は休まずお客さまのためにがんばれるだけがんばるのだそう。
人気の秘密はお味だけでなく、ご夫妻のお人柄にもありそうですね。

看板には「東村山のソウルフード」ではなく「東村山“本町”のソウルフード」とあります。
これもお二人の奥ゆかしいお人柄の表れですね。

これからもお互いが同じ方向を向いて

今回お話を伺って感じたのは、お二人の言葉の端端からお客さまへの感謝が伝わってくること。「常連さんあっての”すぱいす”。来てくださって本当にありがたい」と奥様。

ご夫妻の密かな野望は、「いつかまた、移転前のようにロードサイドに店を構え、駐車場のある広いスペースで、昔のメニューを復活させたい」という願い。

お二人を見ていたら、星の王子さまの著書で有名なサン・テグジュペリの名言を思い出しました。「愛する、それはお互いに見つめあうことではなく、いっしょに同じ方向を見つめることである。」将来を語るお二人は本当にステキでした。

みなさんも、ちゃんぽんとちゃんぽんに込められた想いを味わいに、ぜひ「すぱいす」を訪れてみてくださいね。

最後に「秋津ダヨ!全員集合」読者のみなさまにとっておきの情報が!
店内で召し上がれる1日限定120個の「手作り餃子」は、在庫があればお持ち帰りもできるそうですよ。

すぱいす
住所:東京都東村山市本町4-6-13
電話:042-395-4447
営業時間:
 11:00-スープがなくなり次第終了
 (11:00-14:00ランチタイム)
アクセス:
 西武新宿線「久米川駅」北口より徒歩約7分
 西武新宿線・国分寺線・西武園線「東村山駅」東口より徒歩約12分
     
 平日のみ「東村山駅」東口よりグリーンバス
 「多摩北部医療センター行き」または「新秋津駅行き」で約7分
 「東村山市役所」下車徒歩1分

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。